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少しぐらい懲りればいいんだ

「起きて、帝人君!」

折角の休日なのに騒がしい声が聞こえる。今週は臨也さんに付きまとわれたせいで、毎日のように静雄さんとの乱闘(間違ってはいないだろう)に巻き込まれた。臨也さん単体と話しているだけでも疲れるのに、だ。そうなると心労が溜まるのは仕方がないだろう。今日はその一週間の疲れをとる為に寝て過ごすと決めていた。それなのに!

「もっと、ねかせてください・・・」
「起きないってことは何されてもいいってことだよね!」
「!!」

 不穏な言葉が聞こえて思わず飛び起きる。この人に何でもは危険だ。ヘタすると一生ものの約束を交わす羽目になる。たとえそれが実力行使の拒否権なしで交わした約束であったとしても、絶対に、守らされるのだ。現に今も寝込みを襲って既成事実でも作ろうとしていたのかベッドに上がろうとしている。事前に声をかけてきただけ今日はましかもしれない。

「あ、起きちゃった。寝ててくれてよかったのに」

 向こうは不満を言ってくるが、もし疲れに負けて寝ていたらどうなっていたかと思うとゾッとする。よかった、起きてほんっっっとーによかった!

「いやですよ!何されるかわからないのに!」
「えー何って、セ」
「うわあああああああああああ!」
「君から聞いたのに途中で遮るなんて非常識じゃない?」

 あなたなんて非常識の塊みたいなもんでしょう!と頭の中で罵倒する。本人に言ってもつまらない応酬が繰り広げられるだけなのだ。それよりももっと恥じらいというものを持ってほしい。聞かれたからといっておおっぴらに言うものでもないだろう。

「あーつまんなーい」

 不毛な会話に厭きてきたのか頬を膨らませぶちぶち言ってくるが、僕のしったこっちゃない。自分が一番大事なのだ。こんなところで残りの一生を棒に振るなんてことは絶対にしたくない。ようやく頭も動き始めたのか落ち着いてきた。そうすると聞いておかなければいけないことがある。

「つまらなくて結構です。で、なぜここに?どうやってここに?」

 朝起きると目の前には臨也さんが!なんて故意に起こされたハプニングのせいで気付いていなかった。これって、不法侵入じゃないか?これが園原さんだったら僕も何も気にせず一日過ごすだろう。まあ園原さんがそんなことをするはずはないけれど。しかしこの男なら話は別。犯罪に足をつっこむようなことをしていてもおかしくはない。盗聴とか、盗撮とか。・・・後で確認しておこう。部屋を借りる時に渡された鍵は合鍵も含めなくしていない。ならば、どうやって。ピッキング、とか?

「愚問だね!まあ、特別に答えてあげようじゃないか。第一にここに来た理由。それは君に会うため。だからもっと喜んでくれてもいいんだよ!第二にどうやって入ったか。そんなの玄関から普通に入ってきたよ。合鍵を持ってるんだから当たり前じゃないか!」
「朝からこのテンションはうざい!いつも以上にうざい!あ、鍵は渡してくださいね」

 ただでさえこの人の相手をするのは非常に疲労が溜まる。それに今日は一日寝て過ごそうと思っていたほど疲れている。その状態で相手をしろだなんて無理に決まっている。それなのに勝手に会いに来て喜べというのか!鍵についても臨也さんは高らかに答えてくれたが聞き捨てならない。先ほども言ったが僕は鍵をなくしていない。

「いやだよ。せっかく合鍵手に入れたのにそれを奪おうだなんて酷いね、帝人君」
「いやいやいやいや酷いも何も許可してないですから。どうやってつくったんですか」

 聞けば臨也さんは情報屋のルートか何かで鍵を得たらしい。部屋の住人の許可も得ずに得た鍵を返さないって犯罪になるのだろうか。でも通報しても警察なんかじゃこの人はどうにもならない気がする。

「やっぱり不法侵入じゃないですか!犯罪ですよ。まあ今さらですよね、そうなんでしょ?」
「・・・いつも思うんだけどさ、君は俺に対する愛が足りてないよね。俺は帝人君を愛してるんだから、帝人君も俺を愛するべきだ!」

 なにそのジャイアニズム。いや、この場合はいざやにずむ?語呂が悪いな・・・。なんにせよ臨也さんの俺ルールなんて僕が従う義理もない。しかも僕の問いに答えるつもりはないらしい。そのうち誰かに聞いたら教えてもらえるかな。静雄さん・・・は無理だし、セルティさん、とか?ああでも嫌な予感がするからやめておこう。

「僕は愛したくないんで、愛してもらわなくて結構です。鍵渡してさっさと帰ってください」
「もーツンデレなんだから!この照れ屋さんめっ!」

 きっぱり否定したはずなのに、どこをどう捻じ曲げたのか予想外の返事が返ってきた。そもそも僕がいつ臨也さんにデレを見せた。それともこれから見せてもらえると思っているのか。ありえない。言ってて楽しくなってきたのか人差し指で僕の額をつついてくる臨也さんはうざい。かつてないほどにうざい。23歳の男が女子高生みたいにキャピキャピはしゃいでいるのを見てもまったく楽しくない。反応するのも億劫になりおとなしくつつかれていたが、さすがに何度もつつかれているとイラッときた。
 カチカチカチ
 枕元においていた携帯電話を手に取り、使うことはないと思っていた番号をひっぱりだす。相手から番号もらったときは登録することに躊躇したが、念のためと登録しておいて助かった。もし登録していなかったら番号がわからなかっただろう。休日に、しかもこんな早朝に――携帯電話を開いた時に見えた時刻は7時をまわっていなかった。この人はいったい何時に侵入してきたのだろうか――やっかいごとを持ち込むのは迷惑だと分かっている。分かってはいるがこれ以上は耐えられない。横目で見た臨也さんはまだ自分の世界にいるらしく一人でよく分からない動きをしている。通話ボタンを押し終えると2.3回のコール音の後、相手はすぐにでた。

「もしもし、朝早くにすみません。えっと、申し訳ないんですけど、新宿にいるはずの害虫がうちにいるので駆除してもらえませんか?・・・はい、そうです。・・・あ、分かりました。それじゃあ連れて行きますね」

 簡単な応答をすると電話はすぐに切れた。朝早いから断られる可能性もあったけど来てくれるみたいだ。よかった。来てくれるとは言ってもここじゃ近所迷惑になるから近くの広まった場所までだけど。臨也さんを連れて出かけるために携帯電話を閉じ着替える。

「ちょ、今の電話ってまさか・・・」

 臨也さんは相手が分かったようで逃げようとしている。それがわかっていて簡単に逃がすものか。ちょうど着替えは終わったところだ。無造作に携帯電話と鍵をポケットに突っ込んで臨也さんを振り返る。焦りを感じ始めている相手に向かってこれでもかってくらいの笑みで言ってやった。

「さて、ちょっと朝の散歩にでも行きましょうか、臨也さん。」

(僕の安眠を妨害した罪は重い!)




「いや、用事思い出したから今日はこれで失礼させてもら」
「ほらほらさっきまでの元気さはどこにいったんですか!」

これでデレない帝人とうざやのうざみかも書けた(?)し、次はパロ書きたいな。
ああでも静帝も書きたい!!
10/02/08