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運命の出会い

「んじゃ、また明日な!」

元気よく手を振る正臣を見送り、僕もその場から離れる。
暗くなってきたため家に帰るまでに夕飯の買い物も済ませてしまおうと、頭の中に買い物リストを浮かべる。
あれもこれもと考え込むうちに目の前には人だかり。
帝人はそれに気付くこともなく進んでいく。

人だかりは割れ、帝人の前には人が一人通れるくらいの道ができた。
いつもならばその人だかりに紛れるものだが、今は道にすら気がつかない。

ぼすん

「すっすみません!」

真正面から人にぶつかった。まずいと思ってすぐさま頭を下げる。
ちらりと周囲の様子をうかがうと左右にすごい数の足が見える。
おかしいと思って顔を上げるとポスターやテレビで見慣れた顔。
一瞬何が起こっているのか分からず思考が停止した。

「もしかして、竜ヶ峰帝人君?」

たった一言。それだけなのに辺りに澄み切った声が響いた。
周りからはキャーとかワーとか甲高い声が聞こえる。

「ごめん、今は時間ないから後で連絡頂戴」

目の前に出されるそれを条件反射のように受け取るとぽんぽんと頭を撫でられた。
声をかける間もなく立ち去る相手をぽかんと見つめること数秒。
視界に映らなくなってようやく思考が動き始める。

もらったそれを見ると連絡先と先ほどの人物の名、羽島幽平の文字が書かれていた。

(それは午後7時の邂逅)


「連絡?ていうか、なんで僕の名前知ってるんだ!」
「それにしても、かっこよかったな・・・」

ニュースソースは静雄さん。かもしれないし違うかもしれない。
もらったソレとは名刺です。さすがに連絡先書く暇はないかな、と思いまして。
女性ファンに背後をねらわれそうな展開です。

10/03/02