臨帝


泣きたかったのを知ってるよ

※唐突に始まって唐突に終わる





「紀田くんがいなくなってさみしいんじゃない?」
「・・・だったら、なんだっていうんですか」


弱っているところを見せまいと気丈に睨みつけてくる様子にぞくりとする。
そこには風格とでもいえばいいのだろうか、普段の姿からは感じられない何かがあった。
しかし、どれだけ強がっていようと瞳の奥が揺らいでいるのが手に取るように分かる。


「酷いなぁ、帝人くんがさみしがってるだろうと思ってわざわざ慰めに来たのに」


本当の理由は違うのだけれど、とそっと心の中で付け足しておいた。
あながち間違ってもいないのに、帝人くんはまったく信じていないようで、あからさまに顔をしかめた。

人の言うことを簡単に信じないのは正しい選択かもしれないが、こちらとしてはおもしろくない。


「帝人くん」
「ほっといてください」


ぷいと顔をそらされるが、ずっと一緒にいた相手が急にいなくなって寂しいのは当たり前だろう。
横顔を盗み見るとうっすらと目尻に涙が滲み始めているのが見えた。


・・・あと、少し。


おもわずにやりと口端が上がる。


「別に、泣いてもいいんじゃない」


何かを堪えているような帝人くんを腕の中に閉じこめる。
身体の奥から湧き上がる熱を感じさせないよう、あくまで優しく、慰めるように。
とっさのことで避けられなかったからか、帝人くんは胸の中で抵抗しているがあまり効果はない。



少し時間が経つと抵抗することもあきらめたのかたんに疲れたのか、はたまたほだされたのか…。
とにかく帝人くんはおとなしくなった。

抱きしめられて気が弛んだのか先程までの反抗的な態度もみられない。


挙げ句の果てに、池袋から姿を消した幼なじみの名を呼びながらなきじゃくり始める。
こうも思い通りにいくとは思っていなかったが 紀田くんが池袋からいなくなった原因は自分にもあるのだが、そんなことはおくびにも出さずに、腕の中にいる帝人くんをぎゅっと抱きしめた。



ああ、俺のものになるのが待ち遠しい!

(たくさん甘やかしてあげる。だから、早く墜ちておいで)



(落ち着いた?)
(はい…。でも、臨也さんの前で泣くとか不覚でした)
(あれ…!?)

文章の書き方が迷子。
鬱まではいかないような、ほの暗いの書くのが楽しいです。

お題『泣きたかったのを知ってるよ』 不器用受け五題より:リライト様からお借りしました http://lonelylion.nobody.jp/