※izmk動画の『粘.着.系.男.子〜』から派生。暗いです。苦手な方逃げて超逃げて!!
ガッツリネタバレ含みますので、未視聴の方は注意!
まさかの波江視点
池袋郊外に建つ、古ぼけたアパートの周りには人の気配が感じられず、
ただ錆びゆくさまがありありと感じられる。
波江は安っぽい音を立てる階段を上り、広がった目の前の風景にため息をこぼした。
目の前には溢れかえりそうなほど手紙の詰まった郵便受けがひとつ。
そこから手紙を無造作に抜き取り、ある程度まで手紙が減ったことを確認すると
波江は扉に手をかけ部屋へと入っていく。
中へ進むとお世辞にも広いとはいえない部屋には所狭しと手紙が置かれている。
山のように積み重なったそれを一瞥し郵便受けから持ってきた手紙を上にそっと置くと、
取り損ねた郵便物を取りにまた玄関へと戻る。
いくら郵便受けが溢れそうだろうと一度に蓄えられる量などたかが知れているもので、
幾度も往復しないうちに閑散とした扉に戻る。
最後の手紙を部屋に置くともう用はないとばかりに部屋に背を向けた。
古いアパートを背にした波江は未開封の手紙がひとつまたひとつと部屋に積まれていくことに、
積み重ねられた手紙が一度も開かれることがないことに、ほんの少しの侘しさを感じる。
「あの手紙も、あいつも、報われないわね」
手紙の宛先でもあるこの部屋の主は、とうに帰らぬ人となっているのだった。
彼が彼であった頃、いなくなった思い人の部屋を買い取った手紙の主は彼を思い手紙を書き続けた。
それはまるで思い人の死を受け入れるのを怖がっているように見えて同情したのか、頼まれてもいないのに週に1度ほど手紙を部屋の中に入れてやるようになった。あまりに多いときは2.3度通ったこともある。
初めのうちはすぐにやめるだろうと思っていたが、1年、2年と年月を重ね続くうちにこの意味のない訪問も習慣となってしまった。
雇い主はだんだんと体を壊し、最近になって記憶を失くしたらしい。
記憶のない彼からこの部屋を売ってしまうことなんて簡単なのにそれもせず、未だに週に1度通っているのは何故なのか。
同情だと思い続けているが、本当はもっと違う・・・。
考えても仕方のないことだと頭を振って帰路に着く。
あの雇い主の性格がどれだけ捻じ曲がっていようと、どれだけ人に憎まれていようと、彼の愛は本物だった。近しくはなかったが、傍で仕事をしていた自分はそう思うのだ。
だからこそ記憶を失ってなお一人を愛し続ける彼を思って空に祈るのだろう。
某素敵動画見てたら、宛先不明になってないのって部屋は残ってるってことだよね?→え?臨也が買収?
みたいな感じでいって、波江さんが様子見してるんじゃないかなあ、という結論に至りました。妄想乙。
別にオチとか無いのに、むくわれないざやです。ごめんね臨也さん。
他にもいろいろ裏設定とか考えてたんですが長くなりすぎそうだったので思い切って削りました。
思い切りすぎて短くなりました。また補完とか書きたいなあ。しつこいですね。やめときます。
素敵MADに多大なる感謝を