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まどろみのきせつ

※リョーマin立海設定


肩を軽く叩かれ柳は振り返った。
何だと問おうとすれば幸村に止められ、彼は先程まで調べていた茂みを指差す。
見つかったということだろうが、わざわざ静かにする理由はなんだと指の示す先を辿る。
茂みの陰になっていて一見しただけでは気付かなかったが覗き込むと裏で仁王と越前が眠っていた。

「こんなところにいたとは・・・。気付かないはずだ。」

そもそも初めての日本の夏に耐えかねた越前に涼める場所を知っているだろう仁王を教えてやったのは自分なのだが、
仁王が暑さに弱いことはしっていても、どこで涼んでいるのかなんて誰も知らなかった。
ダブルスを組んでいる柳生さえ知らないため、
越前にそれを教えたというだけでも気を許しているのが分かる。

2人が眠っていたのは屋上庭園の片隅にある植え込みの陰だった。
部活の休憩中にわざわざ屋上まで上ってくる酔狂なものもそういないし、
意識して探さないと見つからない。
なるほど、これなら今まで誰も仁王を見つけることが出来なかったのも頷ける。

「せっかく見つけたけど、どうしようか。」

起こすのはかわいそうだな、2人を起こさないための気遣いから声を抑えて言いながら目を向ける先には眠る2人の姿。

仁王が越前に腕枕をしてやりながら2人で向かい合っている。
少し体を丸めている越前が猫のようだ。
それならば仁王は飼い主だろうか?

いや、親猫か。
その方がしっくりくる。


自然と笑みがこぼれ落ちたのに気付きすぐ表情を引き締める。
しかし人前でここまで無防備な表情を見せる仁王はめずらしい。
いつもはといえば、人が近づく気配でも目が覚めるのか眠っている姿を見せないし、
こう易々と自分の隠れ家を見つけられることもない。
これは良いデータがとれそうだと満足していると視界の端で蠢く黄色が目に付いた。

「何をしているんだ、幸村?」

ごそごそと茂みの奥に入り込んだ幸村は顔を綻ばせる。

「羨ましいなと思って。」
「もうすぐ部活が始まるが。」
「真田が居るから大丈夫だろう。気になるなら柳は戻ればいい。」

顔に浮かんだ笑みは崩れないが動く気はさらさらないのだろう。
そもそも幸村と柳がここにいるのはここで寝ている2人に部活の開始を伝えるためなのだが、
2人の様子を見て幸村は自分も昼寝に参加することに決めたらしい。
柳の返事を待つことなく越前の横を陣取り、すでに眠る体制に入っている。

戻ればいいと言われても、レギュラー2人に部長がいないのだ。
練習が始まってすぐに真面目な副部長からの叱責が飛ぶことは想像に難くなく、
どうせ怒られるなら少しぐらいいい思いをしたっていいんじゃないかと
叱責を甘んじて受けることを決め柳は茂みの奥へ足を向けた。

気付いたらもう肌寒くなってしまったので急ピッチでup!
安心の寝オチ。すみません。
そして少々タイトルチョイスを間違えました。今年の夏も暑かった。
立海って屋上庭園あるんですね。幸村がいりびたってそうです。

タイトルはAmaranth様よりお借りしました。

11/09/23