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仁王+リョ

リョーマin立海



「うわ、雨降ってんじゃんか!」

部活を終え着替えを済ませた赤也が窓の外を見やると、激しくはないものの雨が降り始めていた。

「傘持ってきてねえよ。」
「今日の降水確率は80%だ。天気予報で言っていただろう。」
「朝は時間なくて天気予報なんて見てる暇ないっす。」
「雨が降らなくとも折り畳み傘ぐらい常備しておきなさい。」
「この様子だともう少し強くなるだろうな。」
「そんなあ・・・。」

がっくりと肩を落とす赤也に、柳と柳生は知ったことではないといわんばかりに自分の傘を取り出す。
部室の端でその会話を聞いていたリョーマは冷静を装いつつも、内心あせっていた。
今朝、倫子に傘を持っていくよう言われていたが赤也と同じく朝は時間のないリョーマは慌てていたこともありすっかり忘れていたのだ。

この様子だと、誰かの傘に入れてもらうのも厳しそうだ。
部活後の疲れきった体に鞭打つのは気が進まないが、走って帰るしかないだろう。
忘れた自分が悪いと諦め、帰り支度を済ます。

すでに先輩たちは部室から出たらしく、その姿は見えない。
リョーマはテニスバッグを背負うと部室の扉を開けた。
雨脚はだんだんと強くなっている。
廂のおかげですぐに濡れることはないが、一歩踏み出せば濡れるのは間違いない。

扉を閉めると上から影が伸び、視界が薄暗くなる。

「仁王先輩?」
「傘、忘れたんじゃろ。」

振り向くと仁王が傘を差しながら後ろに立っていた。

「入りんしゃい。」
「・・・どうも。」

ひとつの傘にふたりで入るのはなかなかに窮屈だし、ひとりで使うより遥かに濡れるだろうことは想像がつくが、ずぶ濡れになるよりかはマシだと好意に甘えることにした。
入れてもらってるのだから傘くらいもつと言ったのだが、話を逸らされてしまいそれは叶わなかった。

「先輩、なんで俺が傘忘れたって分かったんすか?」
「さあ、なんでかのぅ。」

リョーマは気になっていたことを問うたが、口の端を上げる仁王に答える気はなさそうだった。
そのまま2人で並んで歩きながら会話を交わす。

「あー!越前ずりーぞ!」

もうすぐ停留所というところで聞こえてきたのは赤也の声。
傘を忘れた赤也は先に停留所に向かい、雨宿りをしながら待っていたようだ。
他のメンバーも疾うに着いていたらしく、傘はすでに畳まれていた。

「俺は雨の中走ったっつーのに、何でお前は仁王先輩に入れてもらってんだよ!」
「何でって・・・、仁王先輩が入れてくれるっていうから。」

理由は俺じゃなくて仁王先輩に聞いてよ。
雨避けの下に着くなり早々詰め寄ってきた赤也を軽くあしらう。
まだ騒いでいるが、横で柳が窘めているので問題はないだろう。

後ろで傘を畳む音がして、まだお礼を言っていないことに気がついたリョーマは体を反転させる。
すると柳生が仁王にタオルを差し出しているところだった。

「仁王君、君という人は・・・。」
「プリッ」

柳生の呆れた声にも謎の返事を返し、タオルを受け取り自分の腕を拭いていた。
今まで気付かなかったが、自分で傘を差していても多少は濡れるのだから2人で入れば相応に濡れるはずなのに、自分はほとんど濡れていない。
そこから導かれる答えはひとつだけだ。

「仁王先輩、」
「ん?ああ、越前。傘を忘れたときは入れてやるからいつでも言んしゃい。」
「っす。次から気をつけます。」

違う。こういうことが言いたいんじゃなくて、

申し訳なくて自然と下を向いていた顔を上げると、タオルで拭いたにもかかわらずぐっしょりと濡れている袖が目に入る。
いくら雨が降っているといっても、土砂降りとまではいかない雨量だ。
ここまで濡れているのは、長時間リョーマを庇っていたからに他ならない。

きっとまた傘を忘れたら彼は同じように何も言わず自分をかばうのだろう。
他の誰かにはしないだろうそれに、特別扱いされているのだろうか、なんて。

傘から出て濡れた肩


「ありがとうゴザイマス。」
「ピヨ」

仁(→)←リョのような仁+リョ。
部長・副部長・プラチナコンビ不在。仁王の口調は迷子。
赤也はバス通らしいけど、他のメンバーはどうやって通ってるのかなー。

タイトルは、リライト様『雨だれ、十題』よりお借りしました。

11/10/20