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猫の日記念

「これ付けて」

そういって幽さんに差し出されたのは黒いカチューシャ。
それも普通のものではなくネコ耳付きの、だ。

「これもな」

静雄さんが渡してきたのは(恐らく)耳とセットの尻尾と鈴付きの首輪。

「なんですか、これ」
「今日はねこの日だから」
「いや、それは知ってますけど」

聞きたいのはなぜ僕がこれを付けなきゃいけないかということであって、別に今日が何の日だとかそういうことは正直どうでもいい。

「いいから付けろ」

意味の無いやり取りに痺れを切らしたのか、幽さんの手からカチューシャを取った静雄さんはそのまま僕の頭にカチューシャを付けてくる。
無理矢理付けられたからか頭が痛い。あ、ちょっと涙でそう。

外そうと頭に手を伸ばすと、静雄さんに手首を掴まれてしまった。
それが恨めしくて、下からじとっと静雄さんを見上げる。

「おま……っ」
「これも付けた状態で”にゃー“って言ってみて」

慌てた様子で掴んでいた手を離した静雄さんは、顔に手を当てて目を逸らしていた。
少し見ただけでも分かるくらい耳が赤いけれど、どうかしたんだろうか。

幽さんはそんな静雄さんに見向きもせず尻尾と首輪を手にさらに要求を加えてくる。
心なしか楽しそうなのは気のせいじゃないはずだ。

「付けなきゃ、いけません、か?」

耳だけでも十分恥ずかしいのに、と思いおずおず聞いてみる。

「うーん。どうしようか、兄さん」
「俺に聞くな……!」
「じゃあそのままでもいいよ」

尻尾や首輪を付けなくても構わないという言葉にほっとしたが、いざ言うとなるとそれも恥ずかしい。
期待されていると逆にやりにくいものでうー、あーとしどろもどろになってしまう。
絶対、今、顔赤い。

どうしようどうしようと悩んでいると、幽さんが助け舟を出してくれた。

「にゃー?」
「に、にゃーっ」

恥ずかしさでいっぱいいっぱいになりながらもなんとか言いきった。
しかし、なんとなく居た堪れなくなったためしゃがみこんで小さくなる。

恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい思うことはそればっかりで、耳を外すことさえ忘れていた。

「帝人君」

声を掛けられて顔を上げると、幽さんが僕の前にしゃがみこんでいた。
ふわりと頭を撫でてくる幽さんはふわりと優しい笑みを浮かべ、口説き文句をひとつ。

「思ったとおりかわいい」

(なにそれ反則!)



「兄さん、そろそろ帰ってきて」
「し、静雄さん!なんで冷蔵庫に頭ぶつけてるんですかああああああああ!!」

突発ねこの日ネタ。静雄がヘタレなのは仕様です。
H22/02/22