「とりあえず、死んで?」
目の前の少女、折原舞流は薄く笑みを浮かべながら額に銃の先を当ててくる。
口元にこそ笑みが浮かんでいるが、眼鏡の奥に見える瞳にはなんの感情も見えずぞっとする。
突然のことにうまく働かない頭で、状況を飲み込もうと試みたが、原因が分からず断念した。
そもそも目の前の少女折原舞流と、その後ろで様子を見守っている折原九瑠璃に会ったのはまだ数回であり、銃を向けられる理由などあるはずもない。
交わした会話といえば軽い自己紹介程度だ。その中で不愉快な思いをさせてしまったとしても、銃を向けられるほどではないだろう。
「怨むならイザ兄を怨んでね」
「
折原、イザ兄、……ああ、この2人は臨也さんの兄弟なのか。臨也さんって妹いたんだ。
ドクリドクリと心臓が脈打つのとは裏腹に冷静になっていく思考回路。
ああ、臨也さんの妹ってくらいだから、こんなことがあってもおかしくないのかもしれない、と思ってしまう。
カチャリとトリガーに指をかける音がした。さっきよりも強く心臓が脈打つ。
殺される、と怖くなって固く目をつぶる。
しかしどれだけ時間が経っても発砲する音はおろか、トリガーを引く気配すら感じられない。
恐る恐る目を開けると、にんまりとしたチェシャ猫を連想させるような笑みに変わっている舞流が目に入った。
何も映していなかったはずの瞳には、この状況を楽しんでいますというのがありありと写っていた。
状況が飲み込めず説明を求めようとすると、舞流は九瑠璃に諌められていることもお構いなしにお腹を抱えて笑い出す。
諌めているはずの九瑠璃も心なしか震えているように見える。
「
「えっ?」
「そう、なのに竜ヶ峰さんってば疑いもしないから!」
あー笑った笑ったと言いながら軽い謝罪をしてくる。
このさいオモチャの銃を向けられたことには目を瞑ろう。だが、2人の持っている銃は僕のようなド素人には分からないぐらい精巧に作られている。それを気づけというのに無理があるし、何より、なぜ持ち歩いているんだ!
「折角なんで、一緒に露西亜寿司にでもご飯食べに行きましょー。お金は驚かせちゃったお詫びってことで、気にしなくていいですよ!」
「えっ、そんな、申し訳ないよ!」
落ち着いてきたようで食事に誘われたが、お詫びをしてもらうほどのことではない。何より年下に、しかも女の子に奢ってもらうだなんて面目が立たない。
慌てて手を振り断るが、むんずと両腕を掴まれてしまって逃げられなくなった。
下手すると明日から食事抜きかな、なんて思いながら財布の中身を思い出していると血の気の引く発言。
「
「そうそう、私たちも食べたいし!お金はイザ兄につけときますから!」
九瑠璃の台詞はフリガナタグなので読みにくいかもしれない……すみません。
次の日あたりに臨也さんが帝人のみにお礼を強制しに来ます。
10/03/11