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ちょっとずつ、ちょっとずつ

こうして共に食事をするのは何度目だろうか。

ファストフードを頬張りながら合間合間に楽しそうに話をする竜ヶ峰をみてふと思った。
初めこそ偶然会って食事を一緒にしていただけであったが、今では仲良くなれないかなんて下心が燻っている。
もうすでにおぼえていられないほどの数になっているはずなのに、一向に進まないこの関係に苦笑いがこぼれそうだ。



そのまま物思いに耽ってしまっていたのか、呼び声に意識を戻され顔を上げると首を傾げながら心配そうに俺のことを見ている竜ヶ峰の姿が目に入った。

「わりぃ、どうかしたか」
「いえ、静雄さんとご飯食べるときはいつも奢ってもらっちゃってるじゃないですか」
「あーいい、いいそんなの。そんな頻繁でもねえし安いもんばっかだから学生が気にすんな」

相変わらず律儀なヤツだ。
聞いたところによると一人暮らしをしているらしいから、たかってきてもおかしくはないはずなのに。
軽く髪の毛をグシャリと掻き回しながら、まあそんなところも気に入っている理由なのかもしれないなと思う。

「そ、そうじゃねくてですね!あの、えっと・・・!」
「お、おう・・・。とりあえず落ち着け?」

普段あまり見ない程の必死さに気圧されて思わず手を引っ込めることも忘れてしまう。
本人も軽くパニックをおこしているのか何を伝えたいのかいまいちわからないため、まずは落ち着いてもらう。
こんなときどうすればいいのかは分からなかったが、深呼吸をして気を落ち着かせているため自分は何もせずにすみホッとした。

「すっすみません。で、あの、お礼といってはなんですけど、今度僕の家で一緒にご飯食べませんか?僕が作るので味の保障はできませんけど、食べられないようなものにはならないし」

一緒にご飯を食べるだけでも嬉しいというのに、手料理だと!
それは俺としては願ってもいない申し出だが、飯をおごっているのは俺が好きでやっていることなのだからお礼なんて必要ない。まあ、手料理が惜しくないといったら嘘になるが。
思っていることをそのまま言うわけにもいかずある程度ぼかしながら伝えると、竜ヶ峰は少し困ったようで眉尻が下がった。

「そ・・・そうですか」

シュンとしているところは気が落ちてちぢこまっている所為か、いつもより小さく見える。
別に何もしていないはずなのに悪いことをしてしまったようで申し訳なくなった。

「なんかあるのか」
「そういうわけじゃないんですけど、」

何かを言いにくそうにしつつも偶にチラリと視線をこちらへとよこしていて、何か思っていることがあるのは分かった。
聞いたほうがいいとは思うが、気のきいた言葉なんてでてくるはずもなく、悩むばかり。
竜ヶ峰はその間にもしどろもどろと何かを伝えようとしている。とはいっても何を言いたいのかは伝わってこない。

「だから、その、静雄さんともっと仲良くなりたいなあ なんて」

言っていて自分で恥ずかしくなったのか、最後のほうは尻すぼみになっていた。

きょとん、

何を言われたのか分からずそんな表現が似合うような感じで反応を返さない俺に、変なこと言ってすみませんと謝る竜ヶ峰。
仲良くなりたい、その言葉がじわりじわりと体に染み込み脳にようやっと到着する。

「謝らなくていい。・・・お邪魔してもいいか?」

気付いたら腕を掴み、約束を取り付けていた。

(2人の距離はあと、)


帝人家の調理器具が電子レンジのみなんて気にしない・・・!
最後のほうグダグダなのでそのうち修正するかもです。

お題『ちょっとずつ、ちょっとずつ』 不器用受け五題より:リライト様からお借りしました http://lonelylion.nobody.jp/