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Encounter

かりかり、かりかり

 部屋にペンを走らせる音だけが響いている。頭の中に綴られていく言葉を文章を紙にのせ、白い原稿用紙を黒で埋める。
 マスが埋まった原稿用紙が順調に二枚、三枚と重ねられていくなか、頭の中の物語は進むことをやめてしまい、ある程度まで書いてしまうと手が動かなくなった。
 頭の中で続きを手繰ってみるがどれもこれも陳腐で、書き表さずともつまらないことがありありと分かってしまう。

 数日も机に向かっているのに一向に進まず、部屋中にボツとなった原稿が散らばっている。

 原稿の受け渡しは今日だというのにまだまったくと言っていいほど書けていないこと、さらにそれを分かっていても書けない自分に苛立ちがつのる。知らぬうちに手に力が篭っていたのか、握っていたペンはパキリと音を立てて、半分ほどの長さになっていた。

「くそっ」

 使い物にならなくなったペンをゴミ箱に向かって投げる。曲線を描いて飛んでいくそれは淵にぶつかり、小気味いい音を立てゴミ箱から零れ落ちる。その少し高い音すら自分をあざ笑っているように聞こえた。
 何もかもが思い通りにいかなくて、苛立ちは消えるどころか増していく気がする。

(もう知らねえ)

 数時間後原稿を受け取りにくるはずのトムさんには謝ろうと決め、散らばった原稿もそのままに不貞寝を始めるのだった。




ピーンポーン

 インターフォンの音が耳に入ってくる。
 ぼんやりとする頭で自分が寝入ってしまっていたことに気がついた。最初はなかなか寝付けなかったのに、この原稿のために二、三日ろくに寝ていなかったのが利いたようだ。

 原稿を受け取りに来たかとも思ったが、普段ならばチャイムを鳴らすと声をあげているのに今はそれが聞こえない。
 今日くる予定なのはトムさんだけだよなと頭に浮かべ、勧誘か何かだろうと思い至ったところでこれ以上不愉快な思いをしてたまるかと無視を決め込む。

ピーンポーン

 しかしチャイムの音はある程度時間を置いて繰り返し鳴らされるため、再び眠りにつくことはできなかった。早く諦めてくれと祈るが、相手には伝わっていないようでまったく帰る気配はない。

ピーンポーン

 幾度となく鳴らされたチャイムに耐えかねた静雄はようやく立ち上がり、玄関へと向かう。先ほどから不愉快な音を鳴らし続けている張本人を一発殴るために。

「おい、いい加減しつけ」
「あ、平和島静雄さんですか?」
「表札みりゃわかんだろ」
「それもそうですね。なかなか出てこられなかったので心配していたんですが、いてくださってよかったです」

 勢いよく扉を開けると、明らかに勧誘とは関係のなさそうな幼い顔つきが目に入る。高校生くらいだろうか、なんだってこんなところに・・・。よくわからないが、静雄に用があるらしい目の前の少年は、本人を見て安心したのかへらりと顔を緩めていた。
 その姿を見て毒気を抜かれてしまい、さっきまでの怒りは何処へか去ってしまった。

「あー、で、お前誰だ?俺になんか用か?」
「すみません!自己紹介がまだでしたね。私は編集部の竜ヶ峰帝人です。今日は田中編集長の代わりに原稿を受け取りに来ました」

 竜ヶ峰と名乗ったそいつは慌てた様子で名乗ると、ぺこりとお辞儀をしてきた。





(田中編集長・・・?ああ、トムさんか)
(つかこいつ社会人かよ、みえねぇ。まさか高卒とか?)

作家静雄と編集帝人の私だけが楽しいパラレル\^^/
某所に載せてたんですが、修正してサイトに載せておくことにしました。
帝人は成人してます。してますよ!見えないだけで!

タイトルは仮でおいときます。決めてなかったので・・・!